ネットワーク構築をしていると、VLANの設定を複数のスイッチに展開したい時があります。その作業を楽にしてくれるのが「VTP(VLAN Trunking Protocol)」です。この記事では、VTPの基本から仕組み、メリット・デメリット、そして初心者にも分かりやすい例え話を交えて解説していきます。
VTPとは?
VTPとは、Cisco社のスイッチで使われる「VLANの情報を自動的に配布するプロトコル」です。通常、VLANはスイッチごとに手動で設定する必要がありますが、VTPを使えば、1台のスイッチに設定したVLAN情報を他のスイッチに自動で同期できます。
VTPの基本的な役割
- VLAN情報(VLAN ID、VLAN名など)をネットワーク内の複数のスイッチに配布
- VLAN設定の一貫性を保つ
- 管理の手間を減らす
VTPの動作モード
VTPには3つの動作モードがあります。
1. Serverモード
VLAN情報を作成・変更・削除できるモードです。この情報はVTPドメイン内の他のスイッチに配布されます。
2. Clientモード
VLAN情報を受け取る専用のモードで、自分ではVLAN情報を変更できません。Serverモードのスイッチから情報を受信します。
3. Transparentモード
VLAN情報の配布に参加せず、自分だけでVLANを管理するモードです。ただし、VTPパケットはそのまま他のスイッチへ転送します。
VTPの仕組み
VTPは、VTPドメインというグループ単位でVLAN情報を管理します。このドメインに属するスイッチ同士は、トランクポートを通じてVLAN情報をやりとりします。VTPのパケットには「リビジョン番号」というバージョン情報が含まれており、この番号が大きい方の情報が優先されます。
例え話で理解するVTP
VTPを「学校のクラス情報の共有」に例えてみましょう。
学校=ネットワーク全体
あなたが校長先生だとします。学校には複数の教室(スイッチ)があり、それぞれの教室には担当の先生(ネットワーク管理者)がいます。
Serverモードの先生
この先生は、新しいクラスを作ったり、クラス名を変更する権限があります。校長先生からの指示で、クラス編成を決め、それを全ての教室に伝えます。
Clientモードの先生
この先生は、クラス編成を変える権限はありませんが、校長先生やServerモードの先生が決めた編成に従います。指示を受け取ったら、それをそのまま使います。
Transparentモードの先生
この先生は、学校全体のクラス編成には関与せず、自分の教室だけ独自にクラスを決めて運営しています。しかし、校長先生からの指示を無視するわけではなく、その指示(VTPパケット)は別の教室には伝えてあげます。
リビジョン番号=最新の指示書
校長先生がクラス編成の指示書を配るたびに、バージョンを更新していきます。先生たちは、より新しいバージョンの指示書を元に行動します。
VTPのメリット・デメリット
メリット
- VLAN設定の自動配布により、作業負担が軽減される
- VLANの一貫性が保たれ、ミスが減る
- ネットワークの拡張時にも効率的に対応可能
デメリット
- リビジョン番号の管理ミスにより、古い情報で全スイッチが上書きされるリスク
- 誤って不要なVLANが全スイッチに配布される可能性
- Transparentモードを適切に使わないと、意図しない設定が反映される
VTP利用時の注意点
1. VTPドメイン
VTPは「VTPドメイン名」が一致するスイッチ同士でしか情報を共有しません。これが異なると、VLAN情報は伝わりません。
2. リビジョン番号
リビジョン番号が大きい方の情報が優先されるため、新しくネットワークに追加したスイッチが古い情報を持っていた場合でも、誤って全体に影響を与えることがあります。
3. VTPバージョン
VTPにはバージョン1・2・3があります。スイッチ同士でバージョンが異なる場合、VTPが正しく動作しないことがあります。
4. パスワード設定
VTPドメインに参加させるスイッチには、同じパスワードを設定することで、誤ったスイッチがネットワークに参加することを防げます。
まとめ
VTPは、VLANの管理を効率化してくれる非常に便利なプロトコルです。しかし、リビジョン番号の扱いやVTPドメインの設定ミスなど、注意すべき点も多いため、使用には慎重さが求められます。学校のクラス編成のように、正しく情報が伝わることでネットワーク全体が円滑に動くことを意識して、VTPを活用していきましょう!
コメント