ネットワークの勉強を進めていると、「VLANは分かったけど、別のVLAN同士で通信するにはどうすればいいの?」という壁にぶつかる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、Cisco Catalyst系スイッチとPacket Tracer(バージョン8以上)を使って、VLAN間ルーティング(インターヴイーランルーティング)の概念から、設定手順まで丁寧に解説します。
先日ご紹介した「リンクアグリゲーションの記事」では、物理ポートを束ねて通信を効率化する方法をご紹介しました。今回のVLAN間ルーティングは、「論理的に分割されたネットワーク(VLAN)」間で通信させる仕組みです。
目次
- VLANとは?簡単な復習
- VLAN間ルーティングとは?
- どうしてルーティングが必要なの?
- 実機構成と使用ツール(Packet Tracer)
- Catalystスイッチでの設定手順
- パケットトレーサーで動作確認
- よくある質問とトラブル対応
- まとめ
VLANとは?簡単な復習
VLAN(Virtual LAN)とは、1台のスイッチを使ってネットワークを仮想的に分割する技術です。たとえば、同じオフィスに「営業部」「技術部」「総務部」があったとしましょう。物理的には同じネットワークでも、VLANを使えば論理的に別々のネットワークに分けることができます。
これはまるで、「同じビルの中にある別々の会社のようなもの」。建物は同じでも、行き来するには受付を通ったり、許可を取ったりする必要があります。
VLAN間ルーティングとは?
別々のVLANに所属する機器同士は、そのままでは通信できません。このようなときに活躍するのが「VLAN間ルーティング」です。
VLAN間ルーティングは、L3(レイヤ3)機能を持つスイッチやルーターが、異なるネットワーク間を中継してくれる仕組みです。
どうしてルーティングが必要なの?
たとえば、下記のような構成を考えてみましょう。
- VLAN10(営業部) → IPアドレス帯:192.168.10.0/24
- VLAN20(技術部) → IPアドレス帯:192.168.20.0/24
このようにIPアドレス帯が異なると、スイッチだけでは通信できません。
そのため、「このネットワークから、あのネットワークに行きたいんだけど、道を教えてくれない?」というナビゲーター役が必要です。それがルーターやL3スイッチなのです。
実機構成と使用ツール(Packet Tracer)
- Cisco Packet Tracer 8.x 以上
- Catalyst 3560シリーズ(L3スイッチとして使用)
- PC2台(VLAN10とVLAN20に1台ずつ接続)

Catalystスイッチでの設定手順
ステップ1:VLANの作成
Switch(config)# vlan 10
Switch(config-vlan)# name Sales
Switch(config)# vlan 20
Switch(config-vlan)# name Engineering
ステップ2:各ポートにVLANを割り当てる
Switch(config)# interface fa0/1
Switch(config-if)# switchport mode access
Switch(config-if)# switchport access vlan 10
Switch(config)# interface fa0/3
Switch(config-if)# switchport mode access
Switch(config-if)# switchport access vlan 20
ステップ3:SVI(スイッチ仮想インターフェース)作成
Switch(config)# interface vlan10
Switch(config-if)# ip address 192.168.10.1 255.255.255.0
Switch(config-if)# no shutdown
Switch(config)# interface vlan20
Switch(config-if)# ip address 192.168.20.1 255.255.255.0
Switch(config-if)# no shutdown
ステップ4:IPルーティングの有効化
Switch(config)# ip routing
ステップ5:PCのデフォルトゲートウェイを設定
- PC1(VLAN10) → 192.168.10.1
- PC2(VLAN20) → 192.168.20.1
パケットトレーサーで動作確認!
設定が終わったら、Packet TracerでPC1からPC2へ ping を打ってみましょう。
ping 192.168.20.2
成功すれば、VLAN間ルーティングは正常に動作しています。
よくある質問とトラブル対応
- pingが通らない → VLANインターフェースがno shutdownか確認
- ip routingの設定忘れ
- PCのデフォルトゲートウェイ未設定
- Catalyst 2960などのL2スイッチはL3機能がない点に注意
まとめ
今回は、VLAN間ルーティングについて、初心者の方でも理解しやすいように、実例とPacket Tracerを使ってご紹介しました。
- VLANでネットワークを分けるだけでは通信できない
- 通信にはルーティング機能が必要
- L3スイッチのSVIとip routingで対応可能
- Packet Tracerで安全に学習・検証できる
リンクアグリゲーションと併せて活用することで、拡張性・冗長性の高いネットワーク設計も可能になります。
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